昨日、ネットで見かけた中川雅仁氏(北海道教育大学 教育学部釧路校)という方の論文、「単極モーターの動作原理」というpdfについて、紙にプリントして読みました。 当方、数学ができませんので計算内容は概略しかわかりません。議論の流れのみを見ています。 管理人の解釈に誤りがあるかもですし、ご指摘いただけるとありがたいです。 以下は、氏の論文と対比させながらご覧ください。
単極誘導モーターの特性を実験で確かめてきた管理人の感想です。 論文の結論は、計算結果から「単極誘導モーターの反作用について」、「磁石(と流れる電流)の磁場により単極モーターの金属部分に回転軸まわりの力のモーメントが働き、それによって回転するが、磁石には、金属板や導線に流れる電流からの力のモーメントは働か」 ず、 「導線部分には金属板部分に働く回転軸まわりの力のモーメントと、大きさは同じで向きが反対の回転軸まわりの力のモーメントが働く。」としています。 管理人には、計算のみから上の結論を得たように思えず、事前にどなたかの実験結果を知った上で計算により実験結果に合う結論を得たのではないかと思います。もしくはご自身で確かめられた上で、計算されたと思います。 なぜなら、管理人は実験で単極誘導(少なくとも単極誘導モーター)の現象において、「磁石が力学的に無関係」だと明確に意識するのに2年ほどかかっており、計算のみにより本件を得ることは困難だと思うからです。 (優秀な方なら最初から気づかれるのかも知れませんけれど、当方の感想です。)
中川氏は、単極誘導モーターを
モデル化した上で、「電流の経路」を金属円板の一部C1と外縁部の接点から電池を含む回転軸までの経路C2とに分けています。その上で導線(経路C2)の受ける力のモーメントN2、並びに金属円板に働く原点Oのまわりの力のモーメントN1を求めています。 2つの力のモーメントは、大きさが等しく向きが反対であると計算により求めています。
その根拠とされる部分が「2.動作原理」の後半部分「ビオ・ザバールの法則云々」の前後なのですが、管理人には氏の言われることがよくわかりませんでした。 おそらく「実験系全体」では、回転モーメントの計は常にゼロであって、磁石を除く系の回転モーメントの計はゼロであるはずだから
N1=-N2 ・・・・式1
となるはず。 と述べられているように読めます。 では、何が磁石をして金属円板と導線に力を生じさせているのかと突っ込みを入れたくなります。
ところで、管理人が注目したのは次の2カ所です。「3.力のモーメントの計算」p142右側下付近の文章
引用1
導線(経路C2)に働くz軸のまわりの力のモーメントを求める。微少な長さの導線が磁場中にあるときに受ける力は、dF2=-IBm×ds であるから、経路C2に働く原点Oのまわりの力のモーメントN2は、
と p143左側上部付近の文章
引用2
金属板に働くz軸のまわりの力のモーメントを求める。 ・・・・ すると、微少な面積の部分が磁場から受ける力は、dF1=-Bm×idS となり、金属板に働く原点Oのまわりの力のモーメントN1は、
の2カ所です。(引用注:青字は管理人による。添え字の大きさや文字の強調が原文と異なります。)
青字の部分は、理解できません。いずれの引用でも、「金属板の部分」や「導線の微少な部分」が磁場から力を受けると「さらっと」書いていますが、氏は、無意識に「磁場が空間に固定されている」ということを前提に書いているということです。2つの引用を簡略化しますと
(1) 導線が 磁場 から力を受ける
(2) 金属板が 磁場 から力を受ける
(3) 1と2の力は磁場を橋渡しとして「大きさは同じで向きが反対」である ・・・・ 式1
ということです。ところが磁場から力を受けるには磁場が空間の何かに固定されていなければ(1)と(2)は成立しません。従って(3)は成立しないということです。 (3)が成立するためには導線と金属板が直接互いに力を及ぼし合う以外に(3)であると言えないということです。
繰り返します。 磁場から力を受けるには磁場が空間に固定されている必要があります。 観測者と当該実験装置は、部屋に置かれています。部屋は地球に固定されています。地球は自転・公転し、太陽は銀河系を自転・公転しています。さらに大きな構造の内を移動しています。 磁場は一体何に固定されているのでしょう。
量子論で考えますと。 これが、電磁誘導ならば、「磁石を構成する原子のペアにならない殻電子」 と 「導体中の移動可能な電子」との相互作用であって、間を光子(フォトン)が行ったり来たりして力を伝えているという解釈が成り立ちます。 しかし、単極誘導モーターにおいて、中川氏の論文を量子論的に解釈するならば、導線内の電子と「何」との間に光子(フォトン)のやりとりをしているのか。また、金属板内の電子と「何」との間に光子(フォトン)のやりとりをしているのか、理解できません。
「続 間違いだらけの物理概念 (パリティブックス)」p123~では、「磁力線の速度は定義できない」とされています。管理人は、同じ考えでいます。(だからといって、本の説明に納得していませんが) 宇宙で固定された物などありません。 なぜ、実験の結果を説明しようとするとき、「さらっと」観測者の視点を説明に都合の良い位置へと変えるのかとても疑問を持っています。(おそらく相対性理論が原因だと感じます。)
素粒子加速器もまったく同じに見えます。物理学が天動説に見えるのは管理人だけなのでしょうか。
過去記事に書いたとおり、単極誘導について研究すると、電場・磁場とは何か、ベクトルポテンシャルとは何か、運動とは何か、深く考えるようになります。ステファン・マリノフが地球の絶対速度を測ろうとした理由が単極誘導にあったろうと納得します。
追記
上記(1)(2)の「磁場」が「磁石の磁場」だというのであれば、次のように書けます。
(1’) 導線が 磁石 から力を受ける
(2’) 金属板が 磁石 から力を受ける
これだと(3)が成り立ちます。この場合だと、磁場は磁石に固定されていることが前提になります。 量子論的に解釈するならば、単極誘導モーターにおいて、導線内の電子と「磁石内のペアでない殻電子」との間に光子(フォトン)のやりとりをして力のモーメントが働き、また、金属板内の電子と「磁石内のペアでない殻電子」との間に光子(フォトン)のやりとりをして力のモーメントが働く。そして、2つの力は大きさが同じで向きが反対であるということになります。 しかし、これだと論文の主旨である「単極モーターの反作用は磁石に働かない」と矛盾します。(2つの反作用が打ち消し合って、結果的に磁石に反作用が働かないとしても、力が働かないという主張となりません。) ですから、導線内の電子と磁石の間に働く力のモーメントと金属板内の電子と磁石の間に働く力のモーメント、それぞれを実験にて「大きさが等しく向きが反対である」ことを証明する必要があります。
管理人の主張は、「少なくとも単極誘導モーターに生じる力において、磁石は力学的に無関係、孤立している」と考えています。 根拠として、2014年4月28日 の記事「単極誘導モーターに生じる力は経路に関係しない」の後半部分を参照ください。 リンク先記事にあげた
において、単極誘導モーターに生じる力(イ)では、細い線が弾かれる様子と(ア)(ウ)における弾かれる様子が異なっているからです。 実験のスローによる動画で確認したところ(ア)(ウ)では、細い線は弾かれる際に「たわんで」います。(イ)では、細い線はたわみがそれほど見られません。 説得力に今ひとつ欠けていますけれど、実験をした本人としては、(イ)と(ア)(ウ)は異なる現象であって、2つの現象が重ね合わさってグラフの結果が得られたと感じています。つまり、(ア)(ウ)で細い線が弾かれる反作用は磁石が受けており、(イ)で細い線が弾かれる反作用は、接点にある銅の小片が受けていると考えています。(当該実験で確認したわけでありませんけれど、その他の実験で確認したことを総合して判断ています。)
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