ファインマン の疑問への答え

ファインマンの疑問

まず、次の記事をお読みください。

ファインマン は、「ファインマン物理学<3>電磁気学」の誘導の物理P213に次のような疑問を呈しました。

われわれは物理学のほかの所ではどこにも、このように単純で正確な一般法則がほんとうの理解のために二つのちがった現象による分析を必要とする場合を知らない。

下線は管理人による。

ファインマンは、誘導現象を二つの異なる分析(電磁誘導とローレンツ力)を必要とする場合を(他の場所ではどこにも)知らないとしました。これをわかりやすく図にしました。

図1 2種類の誘導現象

少し具体的に示します。電気を起こす方法は、静電誘導、摩擦電気など幾つかの方法があります。主な方法として電磁誘導とローレンツ力の2種類あります。

2つの誘導現象による起電力は、電圧計で測っても区別できません。つまり、電圧を合成することが出来ます。
例えば、電磁誘導のAC1.0ボルトに単極誘導のDC0.5ボルトを合成した場合を考えます。

  • 交流の最高電圧は、実効値(公称電圧)に√2を掛けた電圧
  • だからAC1.0ボルトの最高電圧は1.41ボルト、最低電圧は-1.41ボルト

AC1.0ボルトの最高電圧は1.41であり、これにDC0.5を加えると1.91ボルトになります。また、最低電圧は-1.41+0.5=-0.91ボルトになります。

このように起電力が2種類あって、しかも合成出来てまったく区別できません。テスターで測って得た電圧は、2種類の起電力がどれだけ含まれているのかを分別することは出来ません

違いは電磁誘導による起電力が交番電流(交流:AC)で、ローレンツ力による起電力が直流(DC)であるかの違いだけです。ACを適当に整流して平滑すれば判別は不可能です。

それで、ファインマンは、「物理学の他の所のどこにも、(交流・直流の違いはあれども区別できない、合成出来る現象)は知らない。」と述べたのです。

 

他にも例がある

ファインマンの疑問に対して、管理人は他にも例があるとして挙げたのが、「重力は磁力か?」という動画です。

動画1 重力は磁力か?

これを図1に倣って図示します。

図2 力の合成例

知っての通り合成出来ます。

ところで、物理学者の寺田寅彦は、随筆「物理学と感覚」において次のように述べています。

たとえば力という観念でも非人間的傾向を徹底させる立場から言えばなんらの具体的のものではなく、ただ「物質に加速度が生じた」という事を、これに「力が働いた」という言葉で象徴的に言いかえるに過ぎない

  • F=mα ここに、力:F  物質の質量:m  加速度:α

この数式は、ニュートンの運動方程式です。中学の理科において、力の合成を学びます。寺田寅彦の言うとおり、力を加速度に置き換えて考えます。

  • 重力による加速度と磁力による加速度合成出来る

それで、「重力とは何か」です。

主に地球の引力と自転による遠心力の合力です。より現代的な説明では、質量を持つ物体がその周囲の「時空」を歪ませることで重力が生じるとされる。

ここでは、話が混乱しますから、遠心力を排除して考えます。重力=引力+遠心力です。つまり、重力の元は「時空」の歪みによるとされる訳です。

管理人は、ファインマンの疑問に呼応する形で他にも例があると示しました。

 

要は、図1の「2種類の誘導現象に見る合成」と図2に示した「2種類の力の合成」は、相似の形であると気づきます。

では、思考を原点に戻します。まず、図2(力の合成)についてです。

  • 重力は磁力ですか? いいえ、重力と磁力の原理は異なります。

では何故、2つの力は合成出来るのかを考えます。管理人の思考過程は以下です。

 

考察の結果「加速度には種類がある」

冒頭、図1のように誘導現象は、2種類あります。

管理人は、ファラデーが発見した単極誘導の現象(「単極電動モーター1821年と単極誘導発電1831年」)の内、主に単極モーターの力学特性を実験で確かめました。(動画一覧再生リスト実験タブにあります。)その結果次のような疑問を持ちました。

  • 教科書にある単極誘導の説明と幾つかの点において整合しない
  • 単極誘導の現象をローレンツ力という説明に置き換えても実験と整合しない

但し、不整合の内容は、ここでは省略します。冒頭の記事か右検索窓で「単極誘導」を検索ください。全1062件中に293件の記事がヒットします。

これら事実から「ローレンツ力という説明単極誘導の現象」だと確信し、なおかつ実験の事実を合理的に説明できる仮説に行き着きました。

  • 仮説「区別できない加速度には幾つかの種類がある

実験結果から仮説へ至る考察の過程で冒頭のファインマンの疑問を知りました。そこから、動画1「重力は磁力か?」に至りました。

 

任意の加速度運動と{加速度一定}の運動は違う

結論を書きます。

  • 時間的に変化する任意の加速度運動と時間的に変化しない加速度運動は、区別できない異なる種類の加速度が働いている。

図3 任意の加速度運動

任意の加速度運動の内、電磁誘導は時間的に加速度が変化する往復運動です。だから誘導起電力は交流ACです。一方の単極誘導の現象は加速度が時間的に変化しない回転運動です。だから誘導起電力は直流DCなのです。一見、何の変哲のない加速度ですが、違いがあるということです。

注意点として、既存のレシプロエンジンやロータリーエンジン、ターボプロップエンジン、ジェットエンジン、三相交流電動機、ブラシモーター、ブラシレスモーターなどの往復運動(膨張、収縮運動)を回転運動に変換する機構を持つものは、全て「任意の加速度運動」に分類されます。また、風車やロケット推進、素粒子加速器なども「任意の加速度運動」に分類されます。

つまり、ファラデーの単極誘導の現象以外は、同じ回転運動に見えても異なる種類の加速度が働いているとして仕分ける必要があります。でなければ、教科書の説明では「管理人が実験で確認した現象」を上手く説明できません整合がとれないのです。(但し、仮説の詳細は、まだ考察の過程にあります。)

事実、ファラデーのパラドックスは誰にも理解できません。これは長年放置されてきた未解決の問題です。

 

ここで、興味深い見解(補足)があります。

  1. 重力による加速度が時間的に変化しない(一定)なのは、重力が回転運動に起因するから。
  2. 加速度が一定である単極誘導の現象と重力は近い関係にある。

 

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Φ について

2010年より研究しています。
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