時間の非対称性について

ここのところ、因果性あるいは物理学の因果律について調べています。そうしますと時間の非対称性時間の矢)に行き着きました。

時間についての考察の出発点である数学者岡潔の言葉を引用します。「自然科学は間違っている」から【2】自然科学者の時間空間より

自然科学者は初めに時間、空間というものがあると思っています。絵を描く時、初めに画用紙があるようなものです。そう思ってます。時間、空間とはどういうものかと少しも考えてはいない。これ、空間の方はまだ良いんですが、わかりますから。時間の方はわかりませんから。

時間というものを表わそうと思うと、人は何時も運動を使います。で、直接わかるものではない。運動は時間に比例して起こると決めてかかって、そういう時間というものがあると決めてかかって、そして、時間というものはわかると思っています。空間とは大分違う。

人は時間の中なんかに住んでやしない。時の中に住んでいる

時には現在、過去、未来があります。各々、全く性質が違うんです。それ以外、いろいろありますが、時について一番深く考えたのは道元禅師です。

が、その時の属性のうちに、時の過去のうちには「時は過ぎ行く」という属性がある。その一つの性質を取り出して、そうして観念化したものが時間です。非常に問題になる。

下線は管理人による。

かなりな期間を要しましたけれども、結論として

  1. 時間とは、過ぎ行く運動の記憶、あるいは記録である。
  2. 時間とは、位置であって量ではない。
  3. 運動は時間に比例して起きるかどうかわからない。

1.について、岡潔の云うように『時の過去のうちに「時は過ぎ行く」という属性の一つの性質を取り出して、そうして観念化したもの』ですから、

図1

のように、時間は、時の現在と未来に適用できるかどうか、全くわからないということです。  古典的には可成りな精度で予測可能ですから、決定論的な感じを受けますけれども、人が生まれ落ちた瞬間に人の活動の全てが決まるということは事実としてありません。 ですからこの辺りに本質があるだろうことがわかります。 はっきり記すと古典物理学の範疇においても、決定論になり得ません。

ある現象において、実験式理論式が一致したとします。後は実験における測定の精度だけです。だからといって、理論式に時間tを用いているならば、本質的に決定論にはなり得ません。  それを量子論的確率だと考えるか、複雑系だと考えるかどうかいろいろあり得るでしょうが。

2.について、時計という機械装置の運動

図1

のように直線に置き換えます。すると文字盤に刻まれた「時刻なる数字」の数直線ができます。これは「位置」であって、「」ではありません。 岡潔が云ったという「数は量のかげ」の例外です。時間は運動にかかる位置であって、これに数を割り付けて「時分秒」の単位をつけたものです。あたかも基本物理量のような振りをしていますけれども、これは間違いです。

3.について、時間は作るものです。その精度は驚異的です。しかし、時間は本質的に過去に起きた記録(時計という機械装置の運動の記録)です。 ですから運動の現在と、未来に起きるだろう運動について、時間に比例して起きるかどうかは、わかりません。  繰り替えします。運動が時間に比例して起きるかどうか分かりません。時間は過去の記録だからです。しかも物理量ではありません。勿論のこと、精度の問題ではありません。 時報は過ぎてからしか知らせることはできません。

 

さて、本題です。ここまでの考察によって分かるとおり、時間の非対称性など、自明のことだと理解できます。

アナログ時計の時針・分針・秒針は、右回転で設計されています。(おそらく南向きにあるときの日の出、日の入りの方向に同じだろうと考えます。) 左回転の時計を設計することは可能です。鏡に映せば左回転になります。だからといって「運動方向が逆方向」なだけであって時間が逆になろうはずはありません。単なる記録、あるいは(過ぎた運動からくる)人の意識が持つ一つの観念に過ぎないからです。

ある人がA地点からBへ運動(移動)したとします。逆にB地点からA地点へ運動したからといって、人は時間が逆行したなどどは考えません。それと同じです。

ついでながら、過去記事において管理人はマイナスエネルギーなる概念を捨てたと記しました。運動から作る時間の基(非対称である=時間は逆行しない)、運動が逆になることもあり得ません。  エネルギーの次元解析は[ML2T-2]で時間を含みます。ですからエネルギーが負になることはあり得ないということです。 観測者に対して物質が「静止している=絶対零度」以下の運動などあり得ません。   ただし、E-M軸平面における真のエネルギーは、物質のエネルギー[ML2T-2]がゼロの状態より低い値はあると考えます。 これは空間が持つある種緊張状態を意味します。真空エネルギー、ゼロ点エネルギー、弾性エネルギー?何と呼ぶか現時点ではわかりませんけれど。空間とは何か?真空とは何か? 五感でわかる空間が3次元と認識される理由を参照ください。

 

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Φ について

2010年より研究しています。
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