自然科学 には「働き」がない

これまでに、プロフィール欄に示した資料を基に、1.自然科学の問題点やヒトが持つ2.心の仕組みと働きについて考察してきました。その結果、自然界には2つ「働き」があるとわかりました。

これまでにわかったことを踏まえて、自然科学の成り立ちを考察します。

自然科学の問題点

数学者の岡潔は、自然科学者が持つ「自然」について、概ね次のように述べています。

  • 世界は思想の洪水である
  • 自然科学者は「自然はわかる」と思っている
  • これを時間空間と言った
  • 時間空間とは何かまったく考えていない
  • 自然科学は、このような「自然」を科学したものの寄せ集めである
  • このようなものは、単なる思想であって、学問ですらない

岡潔は、世界は思想の洪水であって、その原因が自然科学にあるとの趣旨を示しています。そこで、自然科学が抱える問題を挙げてきました。

問題点の主なものと解説を幾つか挙げます。

  • 自然科学には、物と事の区別がない
  • 物にはがあり、事(動き:運動)にはがある
  • 角度から作る時間は事の質である
  • 弧理論による境界空間という模型を示した
  • 何より自然科学には、発見・創造の仕組みがない
  • 仏教ではこれを他力という

 

数学の使えない世界

岡潔は、人には心が2つあって、「2つめの心は、数学の使えない世界だ」と述べています。【6】数学の使えない世界より。

第2の心の世界ですが、二つの第2の心は二つとも云える、一つとも云える。

不一不二と云うんです。不一不二と云ったら二つとは云えない一つとも云えないのですが、この自然と自分とは不一不二、他人と自分とも不一不二、こう云う風。

この第2の心の世界はその要素である第2の心は二つの第2の心が不一不二だと云うのだから数学の使えない世界です。又この世界には自分もなければ、この小さな自分ですよ、五尺の体と云う自分もなければ、空間もなければ時間もない。時はあります。現在、過去、未来、皆あります。それで時の性質、過去の性質、時は過ぎ行くと云う性質はあります。しかし時間と云う量はありません。そんな風ですね。自分もなければ空間もなければ時間もない。その上数学が使えない。物質はここから生まれて来て、又ここへ帰って行っているのだと云う意味になることを、山崎弁栄上人が云って居られる。

現代の教育は、数学の使えない世界について考えることを教えません。当サイトでは、このような世界がどうなっているのかを求めてきました。ヒトどのようであってその働きはどこから来るのかです。そこから、言葉は出来てきます。そうやって、の世界へ至ります。

 

言葉以前

以上の結果をまとめました。

図1

太い縦の破線で区切ります。左が心の仕組みと働きです。右側が自然科学の領域です。左側は、岡潔の言った数学の使えないです。心の本体は、大宇宙の中心から来ます。これは、お釈迦様のBuddhaであり、岡潔の”情”、あるいはヲシテ文献のひとつ、フトマニの「」です。

まず、大宇宙の中心には「働き:はたらき」があります。その働きにより「わかる」のです。何がわかるのかというと、物がわかり事がわかります。事とは動きです。運動です。

「物がわる」が現在で、「事がわかる」、「動きがわかる」が過去です。これが「」を形作っています。岡潔は、現在と過去と未来について述べています。【5】情の特色より。

情は分かつべからざる全体である。やはり部分として分かつべからざる全体である。無量のそういう部分がある。情の中には時間も空間もありません。時はありますが時間という計量的なものは無い。また、空間は量的に質的にありませんが、時については2種類、2つですね。過去と現在、それだけですが、新しい現在が古い現在に変わる。その古い現在が過去になっていくということは限りなく繰り返される。そういう意味で未来は無い。

現在の積み重ねが過去となっているということです。ヒトの心は過去を記憶する仕組みを持っていません。だから処理系としての肉体が必要になります。ヒトには心が2つあります。これをタマシヰと言います。また、肉体は「ウ」によってできています。

  • ヒト=タマ+シヰ+ウ(渦:物と事)

ここで、弧理論においては、物と事は必ず”対”となります。

余談です。最近、医師の矢作直樹氏が出演している動画を観ています。同氏が強調している「中今なかいま」は、上に挙げた「現在」を示しています。つまり、中今とは、数学の使えない世界のことです。

 

言葉(言語)の成り立ち

物がわかり、事がわかります。事は過去ですので、肉体である脳に記憶します。次いで、物と事に音韻や文字(記号)を割り当てます。これが言語です。言語には3種類あります。

  1. 記号に物と事の意味を割り当てる。所謂、表意文字。ex.漢字。
  2. 記号に物と事の音韻を割り当てる。所謂、表音文字。音韻が意味を表す。ex.英語。
  3. 記号に物と母音を割り当てる。記号に事と子音を割り当てる。所謂、表意表音文字ホツマ文字、ヨソヤコヱ(48音)

まとめると、次の順番に物事がわかります。

  • 物と事を音韻や記号に割り当てる。
  • 言葉で言える。文字で書ける。
  • 物と事の意味がわかる
  • 物と事の価値がわかる
  • 意識を通してわかる

岡潔の言った「情・知・意の順に働く」と同じです。情的にわかり、それを知的に言い表すことで、文化は出来てくるといいます。

1.表意文字の代表として漢字があります。漢字には幾つかの欠点があります。代表的には、読みがないこと。山、川、魚、鳥、林などのように、見た目を言い表していて、複雑な概念の表現は苦手です。新しい概念が出てくれば、一つの文字を造らねばなりません。

2.表音文字の代表としてアルファベットがあります。文字は、読みだけで意味は音韻にあります。新しい概念の表現には、アルファベットをつなげることによって対応できます。

1.2.の言語に共通する欠点として、物と事に区別がありません。自然科学において、英語が基底にありますから、当然のこととして自然科学には物と事の区別がありません

3.は一つの音と韻に一つの記号を割り当て、物と事に意味付けします。これが日本語の起源となる、ヨソヤコヱ(48音)です。

図2 出典:ヨソヤコヱ(48音)日本ヲシテ研究所

ヨソヤコヱは、物を5つの母音に割り当て、事を10の子音に割り当てています。つまり、日本語は、最初から物と事を区別して創られています。これが表意表音文字です。

言葉が持つ特筆すべき点があります。言葉はその成り立ちからして、現在を含まない過去です。物と事が揃って初めて言葉で言えるからです。矢作直樹氏が言う中今の意味をお考えください。

 

自然科学の成り立ち

言葉が「心の働き」からどういう経緯を持って出来てきたかわかりました。

再掲

自然科学者は時間・空間としました。しかし、彼らは、時間は現在を含まない過去だということを知りません。また、空間とは何かを考えていません。

それで、空間、物質、時間、並びに重力として研究を続けてきました。それで、物質の質量mと時間tを含んだ加速度aの関係を力Fとして表しました。これがニュートン力学です。ただし、は人間の便宜に過ぎません。

そうして、自然界にある4つの力(重力、電磁力、2つある核力)を統合しようと苦闘してきました。

一つの結果が量子論です。これは統計と確率によっています。もう一つがニュートン力学の一般化としての相対性理論です。それぞれに問題があることは指摘したとおりですが、その行き着く先にあるのは、多元宇宙論とビッグバン宇宙論です。

多元宇宙論は、確率からして我々人類が居る可能性は限りなくゼロだから、きっと宇宙は無数にあるに違いないという考え方です。

また、ビッグバン宇宙論は、冒頭から述べたとおり、自然科学には、初発?となる「働き」がありませんので、その最初の働き超爆発に求める考え方です。

そうして、自然科学は量子論と相対性理論の統合に100年以上を費やしてきました。寺田寅彦の指摘したとおり、感覚というものを蔑ろにしては先へ進むことはできません。

数学の使えない世界に気(キ)づかないままでは、他力「気(キ)づかされる」による発見・創造はありません。

 

Follow me!

ブログランキングの応援と広告のクリックをお願いします。 にほんブログ村 科学ブログへ  学問・科学ランキング  

Φ について

2010年より研究しています。
カテゴリー: 解説 タグ: , , パーマリンク

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です

CAPTCHA