フリーの物理学者である井口和基氏のブログを時折読みます。最近、以下の記事が気になったのでメモします。
2019年 05月 16日の『思わず買った学研ムー6月号:「UFOの電磁的飛行原理」と「保江邦夫の超常現象事件簿」 があった! 』より一部引用します。
問題の松島仮説では、「ローレンツ力を使う」ということだが、ここで注意しなければならないことは、ローレンツ力には2つあるということである。
実は、マックスウェルとヘヴィサイドのオリジナル方程式には存在したが、現在のマックスウェル方程式からは脱落した項が存在するのである。
電流Jにも2つある。いわゆる直流電流と交流電流である。
ここにも厄介な混乱があるわけだが、電流は荷電密度ρ✕速度v=ρvと書かれる。これが直流電流に対応する。電荷-eの電子が速度vで直線運動すれば、そこにj=-evの負電流が流れる。
しかしながら、電気回路には交流が流れる場合があり、そういう場合の電流は必ずしも電子が流れるのではなく、分極電流が流れる場合がある。分極はDとかかれるが、D=<qx>である。電気分極=電気双極子の平均値である。qは電気双極子の電荷qである。
これが時間変化する場合、dD/dtとなるが、この場合、
dD/dt =<qdx/dt>
となって、やはり電流と同じものになる。これがマックスウェルの変位電流である。
つまり、電流Jにも二種類存在し、
J=j+dD/dt
となるわけだ。
普通のローレンツ力は、定常電流が直流を想定し、
F=qv✕B=J✕B
と書ける場合である。これに対して、マックスウェルおよびヘヴィサイドの時代には、もう一つのローレンツ力が想定された。それが、
F’=B✕dD/dt
である。ヘヴィサイドの論文集や電磁気の本では、ちゃんとこの力の効果を議論している。
上の松島氏の主張は、交流電流を用いた場合、この変位電流による、ローレンツ力が無視できない効果を発揮するということなのである。
ところで、ファラデーとマックスウェルとさらにヘヴィサイドの時代では、まだもう一つ別の未知の項も残されていた。
それが、起電力である。起電力にも2種類あって、一つが我々が知る電場E。もう一つが、上の誘電体のローレンツ力が生み出す起電力である。誘電体が速度vで運動すると、その周りに直交する起電力v✕Bが生じるのである。これは電荷に無関係とした。
我々の現在のゲージ場に基づく電磁気学では、ローレンツ力は電荷にのみ働くと仮定する。だから、中性の物体にはローレンツ力は生じないと考える。
したがって、マックスウェルとヘヴィサイドは起電力は
E’ = E – v✕B
同様に、磁場Hの場合にも2つあり、誘電体Dが速度vで運動すると、その周りに直交する方向にD✕vの誘導磁場が生じると考えた。したがって、
H’ = H – D✕v
と書いた。
これをマックスウェル方程式:
curl H’ = curl(H – D✕u) = J = ρv + dD/dt,
curl E’ = curl(E – w✕B) = dB/dtとして解くと、
V = (u+w)/2±√{c^2 + (u-w)^2/4}
ただしcは真空中で静止系での光速度。
つまり、誘電体の磁場中と電場中の運動により、その速度が違う場合、光速度は真空中の光速度より速いものと遅いものに分かれるという結論であった。
20世紀の電磁気では、この両方の項は存在しないことになり、おそらくその項の一つにローレンツ力と名を残すことになったオランダの ローレンツ が消去したと思うが、その結果、光速度は一つのみになったのである。
そこからアインシュタインの特殊相対性理論が生まれたため、ヘヴィサイド以前の思想は歴史の彼方に消えたのである。
下線は管理人による。
元の疑問は、かつて黒月氏に質問した「マクスウェルの原方程式」に関することでした。黒月氏による解説は氏のサイトの次にまとめられています。
- 1864年のマクスウェル方程式にある ローレンツ力 には…
The Lorentz Force in Maxwell Equations at 1864 … - 1864年のマクスウェル原方程式についてOn Maxwell’s Original Equations at 1864
井口氏の解説も黒月氏による解説もよくわからないのですけど、ヘヴィサイドの頃には”物理現象”として認識されていたものに(少なくとも)2つ以上あったということのようです。上記の引用部によれば、「マックスウェルとヘヴィサイドのオリジナル方程式には存在したが、現在のマックスウェル方程式からは脱落した項が存在」したのであって、それが2つの ローレンツ力 であったようです。わかりにくいですけど、井口氏の記事の引用部をまとめると以下のようです。 続きを読む
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