カルロ・ロヴェッリ著「 時間は存在しない 」について その5

前回に続いて、カルロ・ロヴェッリ著(以下、著者という。)の「 時間は存在しない 」から興味深い点を読みます。

写真1

著者は、1960年代から、時間変数を含まずに量子重力を記述する努力がなされてきたことを紹介しています。p118より引用します。

時間変数をまったく含まずに量子重力を記述する方程式がはじめて書かれたのは、千九百六十七年のことだった。アメリカの二人の物理学者、ブライス・ドウィットとジョン・ホイーラーが発見した。今日ホイーラー=ドウィット方程式と呼ばれている式である。

量子重力の基本式に時間が含まれていなくても、なんの不思議もない。基本的なレベルでは特別な変数は存在しない、という事実の結果でしかないのだから。

この理論は時間のなかで物事が展開する様子を記述するわけではない。物事が互いに対してどう変化するか、この世界の事柄が互いの関係においてどのように生じるかを記述する。ただそれだけのこと。

注:編集の都合、”・”で強調された原文を”下線”で代用しました。 1967年に2人の物理学者によって時間を含まずに記述されたとのことです。最初は納得していましたが、よく考えたら変です。著者たち物理学者の云うことは半分は正しいけれど、間違っています。理由は以下です。

彼らの理論は、量子力学と相対性理論が基礎になっています。

相対性理論に問題があります。(正確には、両方に問題があります。今回は後者だけを取り上げます。) よく知られているように相対性理論により時間・空間が歪むとされています。相対性理論の矛盾を指摘したのが杉岡氏による「相対論物理学者に捧ぐ その4」です。特殊相対性理論の根幹にあるのが光速度不変の原理です。

光速度(cで表す。)が不変であることを知るためには、その前に時間というものがわかっていなければなりません。 数学者岡潔は、「時間というものを表わそうと思うと、人は何時も運動を使います。で、直接わかるものではない。」と述べました。「【 2】 自然科学者の時間空間」より。「日本標準時をつくる」を参照ください。つまり、「光速度不変→光速度→時間→運動」になり、まず運動がわからねばなりません。

「光速度が不変である」ことの検証については、「エーテルの存在について」の歴史が参考になります。「七つの科学事件ファイル―科学論争の顛末」を参照ください。当サイト内を「七つの科学事件ファイル」で検索するといくつか記事が出てきます。

光速度不変の原理が物理学においてすべての基準になっている件について、簡単に説明します。

写真1

空間を赤い風船の表面(2次元平面)に例えます。空間の2点間(A-B)の距離を”モノサシ”で計ります。空間が歪んだとします。A-B間の距離は変化するとともに”モノサシ”も変化します。これでは空間の歪みからA-B間が歪んだかどうかを判断することはできません。そこで、空間内にあるけれども、光速度は空間に対して変化しないとするならば、すべての基準を光速度に置きかえればよいことがわかります。写真1では、曲尺かねじゃくが光速度に相当します。この曲尺が存在するかどうかの議論と実験並びに相対論が予想するに相当する現象があるかどうかの観測が1900年代初頭に繰り広げられたのです。「七つの科学事件ファイル」によれば、この論争の経緯がかなり怪しいのです。アーサー・エディントンはかなり怪しいです。

で、光速度が不変であることを受け入れた物理学者たちは、1960年代頃に時間変数を使わずに記述できたということです。しかし、光速度がわかるためには、その前に時間がわかっている必要があります。時間は運動からつくります。ここに循環があります。この循環をまとめたのが次図です。

図1

それが素粒子物理学であろうと場の理論であろうと同じです。如何なる理論だろうと自然科学は循環です。これに気付いたのが2018年ですし、言葉と言葉を使う人の思考(第1の心)も循環だと意識したのは今年に入ってからです。

早い話、無理に光速度が不変であるという原理を取り入れるより、別の次元軸の存在を考えた方が余程に合理的だと感じます。 2018年9月28日「別の次元軸 を考える理由」を参照ください。現状、時間という頸木くびきが光速度に起き代わっただけです。

物理学者たちが目指すべきは、時間と光速度を使わない方程式です。「 時間は存在しない 」という本は実に興味深いです。著者は恐ろしく素直なのだろうと感じます。普通は立場上、絶対に出さないだろうし、わかっていても知らない振りをします。

どうも、「物の運動とは何かが問われなければならない」というのが行き着く先です。これまで散々ある科学者の言葉から考察して来たことです。でも、まだ足りないと感じます。

 

補足です。E=mcを移項して、m=E/cです。素粒子の質量はGeV/cで表されます。ですから、著者は時間変数を含まない方程式と云いながら、方程式で表される素粒子に光速度が入っています。

図2 出典:http://www.netlaputa.ne.jp/~hijk/memo/quark.html

上図の”質量[GeV]”の表示は、”/c”を省略してあります。

話は逸れます。時間は(人の五感でわかる)太陽や原子の運動からつくります。それ未満、即ち素粒子から時間を作れるかどうかとの疑問を持っています。つまり、素粒子群が基本粒子であるならば、素粒子から時間を作れるはずです。でなければ、素粒子の運動に人が持つ時間という観念は当てはまらないということになります。できれば10-44秒が計れる”量子場による時計”があれば最高です。でも人の五感でわかる量子場があるのでしょうか。

 

Φ について

2010年より研究しています。
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